専門家信仰を打ち破りより広い視点を持つ重要性
【記事執筆者】水川健人
マーケター・思考設計士。個人や中小規模ビジネス向けに、マーケティング戦略のアドバイスを主におこなっている。
【価値あるものが正しく認められるビジネス業界】を目指して日々活動中。

 

専門家と聞くと無条件で、その情報は正しいと信じられる。

 

特に日本だと専門家は神のように絶対の信頼性を持ち、
その言葉を無条件で信じ、受け入れる人が多いです。

 

ネットが発展し、あらゆる情報を個人が入手できるようになってもなお、
この傾向は変わりません。

 

あまりの情報量の多さに迷うことが増えたために、
専門家の影響力が増したのだとも考えられる。

 

しかし、そもそも専門家とはそこまで万能ではありません。

 

豊富な知識やスキルを持っていることは確かですが、
現実を見ることにおいては普通の人より劣ることがある。

 

特にある一分野に特化している専門家というのは歪んだ現実を見るために、
発する情報が現実離れした理想論、幻想になりがちです。

 

そんな情報を受け入れ続けていれば自分自身の目も、
どんどん曇っていくことになるでしょう。

 

この記事ではなぜ専門家が現実において、
専門家ではない普通の人に劣ることがあるのか?

 

その理由を解説しながら専門家信仰を打ち破り、
視点を広く持つことの重要性をテーマにお話していきます。

 

大抵の専門家が現実ではあまり役に立たない理由

 

本物の専門家、特にある一分野に特化した専門家というのは、
ある分野において多くの知識や高いスキル、
鋭い洞察力を備えているのは間違いありません。

 

ですが、現実の世界においては実はあまり役に立たないのです。

 

なぜなら現実は多くの分野(要素)が複雑に絡み合い、
ある一分野で説明し切ることができるほど単純ではないため

 

加えて、ある分野における論理体系等が根本から、
現実を反映していない仮設を出発点にしていることもあります。

 

 

わかりやすいところだと経済学がそうです。

 

経済学に登場する人はエコンと呼ばれる存在であることを前提としています。

 

エコンとは完全に合理的で、(市場にて)起こりうる取引に対して、
すべての情報を持っていることが前提として仮定されている存在。

 

であるため、経済学の説明の中での人は決して誤った決断をせず、
取引の中で自分のリスクやリターンを完全に把握し、
必ず満足のゆく結果を出すことができます。

 

そのため、未来などに対する不安などからも無縁であり、
経済学では貯金という概念がなく異常だとされてます。

 

ですが当然、現実にはそうではありません。

 

人間はある取引に対してすべての情報を持つことなどできないし、
ときには非合理的、感情的な決断などで判断を誤ることもある。

 

未来に対して不安を持ち、貯金などを行うこともあります。

 

そんな不完全な人が運営する経済についての説明を行うのに、
完全な存在であるエコンを想定した経済学を使えばどうなるか?

 

当然のことながらトンチンカンなものになりますし、
実際、大抵の経済学者と呼ばれる人たちの情報発信などは、
現実に則さない理想論であることがほとんど。

 

現在では不完全性を考慮した行動経済学という分野も発展していますが、
日本では旧来の経済学がまだ大きな力を持っていますね。

 

そしてこれはあらゆる分野にも、当然ビジネスにも言えることです。

 

専門家とは現実に対してはギャンブラーである

 

ようは、大抵の専門家は現実という大きな枠組みの中のある一部分を考察して、
それをさも現実の全てを説明するかのように情報を発信しているのです。

 

しかし、その一部分以外についてはほとんど考慮しない(できない)、
あるいは完全に無視するために発信した情報が正確かは運次第。

 

扱う分野が狭くなり見える範囲が狭くなればなるほど、
運によるものが大きくなっていく

 

ポーカーみたいな対戦型のゲームで自分の手札だけを見て、
相手のことを一切考慮せずに勝負に出るようなものです。

 

手札の強さは専門家がカバーできる分野が、
現実の中でどれだけの割合を占めるかに依存する。

 

つまり専門家であればあるほど、狭く深くであればあるほど、
現実では勝負運に弱いギャンブラーになっていくということです。

 

 

故に、専門家の意見というのは現実にはあまり役に立たないことが多い。

 

ビジネスにおいても例えば大抵の広告代理店は広告の専門家ですが、
ビジネスの専門家ではないのでビジネス全体を見ることはしません。

 

なので、売上を上げるために広告代理店に依頼してみても、
費用のわりにリターンがないみたいなことがよく起こります。

 

専門家信仰、専門家は絶対に信じられるという考え方を持っていると、
現実においては大きな不利益をもたらすことも多くなっていくのです。

 

専門家が最大限の力を発揮できる場面

 

ここまで専門家が現実には不向きである理由をお話してきましたが、
勘違いしてほしくないのは専門家は高い能力を持っています。

 

ですが、その能力は現実では発揮されにくいのです。

 

ではどういったときに専門家は最大限力を発揮できるのか?

 

一つは現実という世界全体を見る視点を持つシステム、
あるいは人がいることが前提条件としてあるときです

 

現実は複数の分野が複雑に絡み合ったものとすでにお話しましたが、
その複雑に絡み合った全体をある程度俯瞰して見られる人。

 

あるいは全体を説明する何かしらのシステムがあり、
専門家という部分のエキスパートが持つ知見を、
現実に当てはめることができる環境がある。

 

例えばビジネスならビジネス全体を見ることができるトップがいて、
専門家が最大限力を発揮できるように要所要所に人を配置していく。

 

その部分だけに意識を集中できるような環境を整え、
上がってきた成果を現実に適切に当てはめることができる。

 

そういう状態を作れれば専門家は心強い力となるのです。

 

加えて、多様性ある専門家の集団を作ることができれば、
さらに大きな力となっていきます

 

というのも、あるどんなに能力を持つ個人よりも、
一般的な人の集団のほうがより良い答えを出すというのは、
あらゆる分野で様々な実験結果で証明されている。

 

それが、ある分野において高い能力を持つ専門家の集団であれば、
出すことができる答えの質もより高くなっていきます。

 

ただ、集団が良い答えを出すための条件がいくつかあって、
その中でも重要なのが多様性と独立性。

 

多様性というのはより多様な分野に詳しい人がいることで、
独立性とは個人の意見が他の要因に左右されないことです。

 

ある一分野に詳しい人だけしかいない集団や、
集団内の個人に権力やお金などによるしがらみがある。

 

そんな集団では意味がないということですね。

 

ですが、様々な分野の専門家が対等に自由に意見を出し合える環境、
そんな環境で出た意見を適切にまとめる人あるいはシステム。

 

この2つが揃うことがあれば専門家の力は最大限発揮され、
より良い答えを出していくことができるようになります。

 

自分の価値判断までをも専門家に委ねてはいけない

 

ここまでいろいろお話してきましたが一つだけ、
絶対に意識しておいてほしいことがあります。

 

価値判断までをも専門家にゆだねてはいけないということです

 

専門家は大抵の場合ある狭い一部分だけを見て、
それに対する見解を示しているだけ。

 

現実をより良い方向に導こうと思っているとも、
現実を正しく見ようとしているとも限りません。

 

普通の人と何ら変わらないどころかカバーする範囲が狭いので、
現実においては普通の人より劣ることもあるというのは、
今回お話してきたとおりです。

 

であるにも関わらず専門家を無条件に信じる。

 

専門家の意見は正しくより良い方向に導いてくれるはずだと、
多くの人が考え自らすべきはずの価値判断までをもゆだねている。

 

そして、専門家とその意見が虚構であると知ると、
現状の全てを専門家の責任にしてまた別の専門家を信仰する。

 

この繰り返しが長らく続いているのが現状です。

 

ですが、ビジネスに限らず人生という大きな枠組みで、
もしより良い未来に近づいていきたいなら、
この専門家信仰を打ち破らなければならない。

 

専門家は救世主でも伝道師でもなく、
ただの人に過ぎないということを意識し、
自分自身の目を開かなければいけない。

 

自分が何を大事にするのか、どこに進んでいきたいのか?

 

そういった価値判断をきちんとおこなったうえで、
専門家の意見をどのように組み込んでいくかを、
自分自身で判断していく必要があると僕は考えています。

 

とはいえ、いきなりそんなことを考えるのも難しいでしょうから、
専門家の情報を受けるときは何を専門としているのか、
現実においてどれぐらいの範囲をカバーしているのか?

 

加えて、より多様な専門家の意見を受けながら、
それらを統合する意識を持ってみてください。

 

逆に、一人の専門家だけとか一分野だけとかを、
受け入れるのだけは意識して避けてください。

 

それだけでも視点が大きく広がって、
より良い意思決定の助けになりますよ。

 

 

では、今回はここまでです。

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