人より一歩先んじるためには演繹思考から帰納思考に切り替えよう
【記事執筆者】水川健人
マーケター・思考設計士。個人や中小規模ビジネス向けに、マーケティング戦略のアドバイスを主におこなっている。
【価値あるものが正しく認められるビジネス業界】を目指して日々活動中。

 

ビジネスではスピードが何よりも大事。

 

ネットが発達した現代だと情報はすぐ広まりますから、
より早い行動が求められます。

 

もたもたしていると別の誰かにアイディアを活用され、
真似されたり自分が形にする前に形されたりと。

 

先を越されることになってしまうこともあるでしょう。

 

では、どうすれば人よりも早く行動することができるのか?

 

そのカギは帰納思考と呼ばれるものにあります。

 

大抵の人は演繹思考という思考方法をしているのですが、
成功を収める人は帰納思考という方法を使っている。

 

演繹思考は帰納思考には絶対に追いつけないのです。

 

  • 演繹思考と帰納思考とはどのようなものなのか?
  • なぜ演繹思考では帰納思考に追いつけないのか?
  • 帰納思考とはどのようなものなのか?

 

人より先んじるにはどのような考え方をすべきなのかについて、
これからお話していこうと思います。

 

演繹思考と帰納思考とは

 

演繹と帰納という言葉は哲学の一領域である論理学から生まれたものです。

 

演繹とはある正しい前提から決まった結論を導き出すことであり、
帰納とはある結論からそれに至るまでの前提を導き出すこと。

 

なので、演繹思考とはある公式からある決まった結果を生むための思考であり、
帰納思考とはある結果からそれに至るまでの公式を生むための思考です。

 

これは算数の計算式を考えてもらうとわかりやすい。

 

『2+2』という計算式から『4』という答えを導き出すのが演繹思考、
『4』という答えから『2+2』という計算式を導き出すのが帰納思考です。

 

演繹思考と帰納思考の違い

 

演繹思考と帰納思考の違いは可能性の広さと結果の保証にあります

 

演繹思考はある前提が正しい場合、そこから生まれる結論は正しいもの1つ。
『2+2』という公式が正しいなら、そこから生まれる答えは必ず『4』。

 

それ以外の可能性の広がりはありません。

 

広がりはありませんがその公式を使用した場合、
そのような結果が出るということは保証されています。

 

ビジネスでは算数の計算式ほど明確な保証はされませんが、
それでもある程度結果を予測し、実際に導くことができるわけです。

 

対して帰納思考はある結論からそこに至るまでの公式を生み出すわけですが、
考えられる公式の仮説は数多く存在します。

 

『4』という答えを導き出せる公式は『2+2』はもちろんのこと、
『1+3』『3+1』、小数点なども含めればもっと多くある。

 

結果にいたるまでのより多くの道筋を生み出すことができ、
これまでになかった新しい公式を生み出すことも可能です。

 

ただし、結果の保証はされてません。

 

新しいということは誰も実践したことがないということで、
それが求める結果を導くのかはやってみないとわからないのです。

 

ビジネスでは帰納思考が演繹思考より重要

 

ここまで演繹思考と帰納思考についてお話しましたが、
ビジネスでは帰納思考で行動できる人の方が、
より多くの結果を残すことができます。

 

ビジネスにおける演繹思考は基本、周回遅れの思考であり、
帰納思考を持つ人より1テンポ遅い行動しかできないからです

 

これは演繹思考の元になる公式、ビジネス的な言い方をすれば戦略の、
生まれ方に理由があります。

 

戦略はまずある結果が観測されてからでないと生まれません。

 

ある結果を観測し、その結果にたどり着くまでの過程を知り、
それをイコールで結べるように整えたものが戦略です。

 

戦略が生まれるということはある新しい結果を、
別の誰かが導き出した後ということ。

 

これを可能とするのが目的となる結果から入って、
自分なりの戦略を1から構築できる帰納思考なのです。

 

つまり、帰納思考の持ち主によってある結果が生まれ、
それをもとに演繹思考の持ち主がついてくる。

 

だから演繹思考では1テンポ遅れた行動しかできないのです。

 

帰納思考から演繹思考が生まれるまでの4つの段階

 

帰納思考から演繹思考が生まれるまでを、
もう少し具体的に見ていきましょう。

 

  1. 創造者による革命的な結果の創出
  2. 定義者による演繹的戦略の定義
  3. 先駆者による結果の積み重ねと一般化
  4. 大衆に広まる

 

創造者による革命的な結果の創出

 

まず、帰納思考の持ち主がこれまでにない、
革命的な何らかの結果を出します。

 

この結果を出す人を僕は創造者と呼んでます。

 

創造者はある結果を導き出したいという明確な目的意識があり、
その道筋を帰納思考によって1から生み出せる人です。

 

なので大抵、何かしらの革命的な変化を起こします。

 

例えばスティーブ・ジョブズさんは人が持つ生産性をもっと高める。

 

そんな目的の元に1家に1台のパソコンというビジョンをかかげ、
当時専門家が扱うものという印象だったパソコンを、
誰でも簡単に扱えるものとして再開発することに成功。

 

結果、情報社会という新たな世界を開くことになりました。

 

これは歴史的にもまれな大変化の実例ですが、
創造者は大なり小なり変化を起こすのです。

 

定義者による演繹的戦略の定義

 

こうした結果とそれによる変化が起きると、
それを観測し原因を調べようとする人。

 

そこから公式や戦略を定めようとする人が現れます。

 

大抵の場合は学者ですがそれ以外の人たちも含め、
定義者と僕は呼んでいます。

 

定義者は世の中に生まれるあらゆる結果を観測し、
検証しながら結果までの過程とその原因を突き止め、
それを1つの戦略としてまとめ上げます。

 

先駆者による結果の積み重ねと一般化

 

定義者がまとめた戦略はすぐに広まるわけではありません。

 

大抵の人は結果が観測され、それが戦略としてまとめられても、
その戦略が本当に結果を導き出すものであるのか?

 

半信半疑から抜け出せず行動することができないか、
あるいはその存在すら知らないという場合がほとんど。

 

ですが、1部の人は積極的に新しく生まれたものを試し、
戦略を行動レベルまで落とし込んでいきます。

 

試行錯誤しながら自分に合うように最適化していき、
それを結果に結びつけていくのです。

 

このような人たちは先駆者や先行者と呼ばれ、
大抵は先行者利益と呼ばれるものを得ます。

 

先行者利益はそのまま金銭的な利益であることもあれば、
知名度や専門家としての確固たる地位だったりもしますが、
何にせよビジネスをやるうえで役に立つものです。

 

また、先駆者が戦略から結果を導き出すことを繰り返すうちに、
戦略の一般化がおきます。

 

定義者が戦略を世に送り出した時点では大抵の場合、
少数の成功例をまとめたものにすぎません。

 

ですが、先駆者による試行錯誤や行動への落とし込みで、
徐々に戦略は一般的なもの、誰にでも実践できる形に変わるのです。

 

 

と、ここまで創造者、定義者、先駆者について話しましたが、
これらは兼任されることもあります。

 

ある1人が先駆者として結果を残し、定義者として戦略を定め、
先駆者として結果も得て一般化するということもあるわけです。

 

大衆に広まる

 

先駆者によって一般化されることにより、
戦略から結果を導き出すのが容易になる。

 

そうすると一気に大衆に広まっていき、
それを利用する人が爆発的に増えます。

 

ある戦略を元に予測可能な結果を導き出す、
演繹的思考で行動することができるようになるのです。

 

 

以上が帰納思考による新しい結果の創造から、
演繹思考により一般的に結果を導き出せるようになる。

 

その一連の流れです。

 

帰納思考で生まれたアマゾンと演繹思考を生んだブルー・オーシャン戦略

 

ではここで、帰納思考から演繹思考が生まれるまでの流れとして、
アマゾンとブルーオーシャン戦略誕生の歴史についてお話します。

 

創造者が結果を作り出し戦略が大衆に広まるまでの流れが、
わかりやすくイメージできると思いますよ。

 

 

ブルー・オーシャン戦略といえば今でこそ有名なもの。

 

その言葉はW・チャン・キムさんとレネ・モボルニュさんという方が、
2004年に発表したことで始まりました。
(ブルー・オーシャン戦略についての著書の日本版は2005年に発売)

 

競争のはげしいレッド・オーシャンと呼ばれる市場で戦うのではなく、
新しい価値で生まれる新しい市場=ブルー・オーシャン市場で、
ビジネスを展開していくというのがこの戦略のコンセプトでした。

 

アップルのipod、シルク・ドゥ・ソレイユ、スターバックス、
日本のQBハウスなどがその例としてあげられています。

 

当時、戦略とは競争に勝つことだというのが主流だった経営戦略界で、
この新しい戦略論は画期的なものとして受け入れられ、
一気に世の中に出回っていくことになりました。

 

現在ではビジネスオーナーではない人でもライバルのいない場所のことを、
ブルー・オーシャンと呼ぶほどに一般的な言葉となったほど。

 

とはいえ演繹思考のためのものとして定義されたブルー・オーシャン戦略は、
ここまでお話してきたようにアップルなどの結果が先にあって、
それを観測することで生まれた戦略です。

 

つまり、ブルー・オーシャン戦略が生まれる前には、
すでにそれを実行していた人たち。

 

帰納思考によって新たな結果を導き出した人がいたということです。

 

その代表例がブルー・オーシャンの例の中ではあげられてませんが、
ジョフ・ベゾスさんによって生み出されたアマゾン。

 

ジョフ・ベゾスさんは1994年春。

 

ネットの利用率が異常なまでに上昇していることに気づき、
そこにビジネスチャンスを見てとりました。

 

ネットでもの売ればいいんじゃないかと考え、
まだネット上で売られてない(つまりライバルのいない)、
本に目をつけそれをネット上で売るビジネスをはじめます。

 

本という市場はすでにあったわけですが、
それをネットを使って売ることで、
ブルー・オーシャンを生み出したわけです。

 

当時はライバルなど誰もいませんでしたから、
ジョフ・ベゾスさんの一人勝ちでした。

 

ただ、ジョフ・ベゾスさんのすごいところは、
ネットでものを売るだけで終わらなかったこと。

 

ネットでのみ完結する当時のアマゾンで成功した後、
今度は多額の資金を投じて現実に物流センターを作りはじめます。

 

この動きを証券アナリストたちは大非難しました。

 

ネット販売で成功しているのになぜそんなリスクを取って、
物流センターを作る必要があるのかと言われ続けた。

 

2000年にネットバブルがはじけたこともあって、
株価も大暴落し経営赤字も拡大し続けることになります。

 

ですが2003年、ついにアマゾンは黒字に転じます。

 

当時、購入から発送、手元に届くまでには時間がかかった中で、
アマゾンは整えた物流網を利用し翌日~翌々日に商品を届ける。

 

圧倒的な「クイック・デリバリー」を実現したからであり、
これが第2のブルー・オーシャン市場の創造。

 

ネットでの購入からものを届けてもらうのは当たり前でしたが、
"早く"届けてくれるところがなかった、早さのライバルがいない中、
独自の物流網を整えることでそれを実現し一人勝ちしたのです。

 

本以外の品揃えも豊富に揃えたアマゾンは、
現在に至るまで最大のEコマース事業として、
その地位を確立させることとなりました。

 

ちなみに、ジョフ・ベゾスさんが新しい物流網を整えたことは、
戦略的にも理にかなった行動。

 

ブルー・オーシャン戦略はライバルがいないところで、
新たな市場を作り勝つというのが最大の利点ですが、
そこにはすぐに後続者が現れるというデメリットがあります。

 

初期のアマゾンはネット上で本を売っていたわけですが、
今では本をネットで売るなど当たり前のことになり、
多くのライバルが存在する。

 

ブルー・オーシャンはすぐレッド・オーシャンになるのです。

 

なのでもし本を売るだけ、ネットでものを売るだけで止まってたら、
レッド・オーシャンになったEコマース市場の中で、
アマゾンが発展することはなかったでしょう。

 

ですが、自社の物流網を整えるという行動によって、
アマゾンはEコマース市場の頂点に君臨した。

 

また、ドローンでの配達技術や、
クラウドサービスの開発など。

 

さらなるブルー・オーシャン市場作りを進めてもいる。

 

そして驚愕するのはそれらを帰納的思考によって、
1から考え、考えるだけでなく実際に行動したことです

 

ブルー・オーシャンという言葉が生まれる前から、
ジョフ・ベゾスさんはブルー・オーシャンを作り出し、
誰よりも早くEコマース事業で成功した。

 

そうして生まれたアマゾンは現在に至るまでトップを走り続け、
これからも走り続けようとしている。

 

それを支えているのが今回お話してきた、
帰納思考による新たな道の開拓。

 

戦略など保証された道があるから歩くのではなく、
新たな戦略という道を目的から自分で生み出しているのです。

 

    演繹思考という消極的な姿勢から挑戦的な帰納思考へ

     

    演繹思考というのは消極的な思考、
    間違いをおそれる心の現れです。

     

    保証がなければ行動できないため常に先駆者である、
    帰納思考の持ち主の後ろを歩くことになります。

     

    対して帰納的思考は批判や否定、あるいは無視されることが多く、
    大抵の場合は多くのマイナスな影響を受けることとなる。

     

    ですが、常に一歩前を歩きつづけることができ、
    そういった思考と行動が世界を切り開いてきました。

     

    今回、帰納思考で成功した例としてあげたアマゾン、
    その生みの親であるジョフ・ベゾスさんにしてもそう。

     

    その成功につながった行動を分析することは簡単です。

     

    例えばアマゾン成功の背景には当時の環境、
    ネットが爆発的に普及し始めたということが、
    大きく関わっています。

     

    Eコマースが普及する土台ができてきていた時で、
    それを誰よりも早く見抜き乗っかったのです。

     

    電気工学や計算機科学で学位を取得していたということ、
    ネットに詳しくなるための下地があったということも、
    実現のための一助であったことでしょう。

     

    先ほどお話した戦略的に理にかなった行動なども含め、
    成功の要因を見ていけばいろいろあげられます。

     

    あげられますがそれはあくまでも結果が出たあとで、
    物事をある程度俯瞰して見ることができるからです。

     

    その当事者として生きていたジョフ・ベゾスさんの視点から見れば、
    どれだけ理にかなっているような行動であったとしても、
    そこには成功できるかどうかの不安もあったはず。

     

    誰も前を歩いていない、自分で道を作るしかないのですから。

     

    物流センターを作ろうと行動したときも、
    多くの批判にさらされることになりましたが、
    それでもくじけることなく行動し続けた。

     

     

    思考を演繹思考から帰納思考に転換すること自体は簡単です。

     

    ですが、帰納思考を元に実際に行動をおこすということには、
    大きな勇気と自分を信じる心が必要になります。

     

    ですが、それができたら多くの人より一歩先を歩くことができる、
    より大きな成果を出すための大きな一助となることでしょう。

     

    なので、演繹思考から帰納思考への切り替えを、
    ぜひ心がけてみてください。

     

     

    では、今回はここまでです。

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