創造力を高めるインキュベーションという手法
【記事執筆者】水川健人
マーケター・思考設計士。個人や中小規模ビジネス向けに、マーケティング戦略のアドバイスを主におこなっている。
【価値あるものが正しく認められるビジネス業界】を目指して日々活動中。

 

創造力は才能だと考える人は多いです。

 

画期的なアイディアとかを簡単に思いつく人を見て、
あの人は才能があるんだと思ってしまうこともあるでしょう。

 

ですが、創造力とは技術であり、
きちんとしたメカニズムがあります。

 

創造力においてあると思われている人はその技術を知らずとも、
スムーズに実践できる点で確かに才能がある、有利と言えるでしょう。

 

ですが、方法を知れば誰でもある程度は創造力を高め、
状況を好転させるようなより良いアイディアを生み出せるのです。

 

ここではそんな創造力を高める技術の一種である、
インキュベーションという方法についてお話します。

 

創造力を高めてくれるインキュベーションとは

 

インキュベーションとはフランスの数学者アンリ・ポアンカレが、
自分の体験を振り返った時、新しい発想を生み出せた条件のことをいいます。

 

ポアンカレは位相幾何学の分野でトポロジーの概念や、
ポアンカレ予想といった重要な発見を行なったこと。

 

また、電子計算機のない時代に有名なバタフライ効果、
事象の予測不可能性について指摘していた人でもあります。

 

そんなポアンカレがそのような発見の元となる発想をおこなう際、
生み出したいアイディアについて集中して考え抜いたあと、
そこから離れて休憩したり別のことに意識を向けたりする。

 

するとあるときにフッとアイディアが降りてくるという体験から、
これを発想を生み出す条件としてインキュベーションと呼んだのです。

 

この突然降りてくるという状況は革命的なものを生み出した人が、
ほぼ必ずと言っていいほど触れることでもあります。

 

それについて熱心に考えていたわけではなくて、
リラックスしている状態などにいると、
ある時フッとアイディアが降りてきたというのですね。

 

なぜインキュベーションが創造力を高めてくれるのか

 

ではなぜインキュベーション、あることに集中した後、
そこから離れるとアイディアなどが思い浮かぶ。

 

創造力が高まるのか?

 

これは、あるアイディアは複数の要素が絡み合ってできていること、
そして人の意識と無意識の機能に答えがあります。

 

まず、あらゆる事柄は基本、複数の要素を持っている。

 

例えばビジネスなら最低でも3つ、
集客と教育と販売の要素を持ちます。

 

ビジネスを大きくしたいとか売上を伸ばしたいと考えれば、
考えるべき要素も増えていくでしょう。

 

であるにも関わらず人は一度に一つのことしか、
意識して考えることができません

 

真っ暗な部屋で懐中電灯を持っているようなもので、
照らしている部分は意識が向いているので見えますが、
他の箇所は暗闇のままなので見ることができない。

 

それと同じでビジネスについて考える時、
集客に明かりを向けて考えるのと同時に、
販売についても考えるとかはできないのです。

 

複数のことを同時に考えたりやってるように見えても、
あることから別のことに意識を素早く移しているにすぎません。

 

しかも移すたびに集中力はどんどん下がっていくので、
効率なども時間が立つごとに下がっていきます。

 

つまり、人は複数の要素を持つ事柄について意識して考えるほど、
集中力は低下し創造力を発揮するどころじゃなくなるのです

 

ですが、人は意識しなくても勝手に活動してくれる、
無意識というもう一つの機能を持っています。

 

懐中電灯に照らされた部分だけしか意識は見れないといいましたが、
無意識は照らされてない場所もきちんと把握し情報を処理しているのです。

 

しかも、意識と違って自動的にそれを行うので、
集中力の低下などもありません。

 

寝てる間とかにも活動してくれます。

 

ただ、意識と違い自分でその働きを把握、制御することはできず、
そのため意識的に無意識の働く方向を決めてやる必要があるのです。

 

イメージが難しいかもしれませんが例えば床に落ちたペンを拾いたい場合。

 

それを意識すれば後は無意識が筋肉の動きとかを制御して、
しゃがんでペンを拾うという動きを行なってくれますよね?

 

意識して体の筋肉の一つ一つを動かしてるわけではなく、
自然に、当たり前のように体は動くはずです。

 

インキュベーションも原理的には同じことで、
まず意識してあるアイディアについて考える。

 

これが無意識に対する方向づけです。

 

後はそれを意識から外し複数の要素を処理する無意識の活動に任せると、
ある時フッとアイディアが降りてくるという状態がおこる。

 

これがインキュベーションによる創造性発揮のメカニズムです。

 

加えて心理学や観測機器の発展などによって、
気分が創造性に影響を及ぼすこともわかっています

 

人は上機嫌であったり幸福を感じていたりするとき、
無意識の部分が活発に働き創造性や直感力が高まる。

 

逆に不機嫌であったり不幸だと感じていたりするときに、
意識の部分が活発になり創造性や直感力が働きにくくなるのです。

 

リラックスしたときに良いアイディアが思い浮かぶのも、
以上なような理由が原因なのですね。

 

インキュベーションを実践するための2つの前提条件

 

ここまでインキュベーションのメカニズムを話しましたが、
では今すぐにあなたがそれを実践できるかというと、
必ずしもそうではありません。

 

インキュベーションをおこすには以下の2つの前提条件が必要です。

 

  • あるアイディアを生み出すに足る材料
  • 無意識におこなえるほどの習慣化

 

あるアイディアを生み出すに足る材料

 

アイディアはその人の認識範囲を超えて、
生み出されることはありません

 

ちなみに認識範囲とはある人が知っていること、
知っていることから想像できうることの範囲のこと。

 

つまりビジネスについて何も知らない初心者が、
それに関する良いアイディアを生み出す可能性は、
限りなく低いということです。

 

良いアイディアを生み出すにはそれに足る材料が必要で、
材料とは大きく分けると経験と知識になります

 

経験は実感を伴う知識をこえる理解を持ち、
材料としてはもっともよく使われます。

 

ですが、ある人が経験したことに限定されるために、
認識範囲を広げるのに時間がかかります。

 

対して知識は自分の経験したことがないことでも知れるので、
認識範囲を大きく、しかも手早く広げてくれます。

 

しかし実感を伴わず理解度は経験におとるため、
知っていても使えないということが起こりえる。

 

一番良い材料の身につけ方は知識を得て、
実際にそれを経験してみることです。

 

アイディアのために経験と知識を積むという意識は持っておきましょう。

 

無意識におこなえるほどの習慣化

 

インキュベーションはようは意識ではなく、
より広く、しかも早く情報を処理できる、
無意識を利用してアイディアを生み出す手法。

 

ですが、先ほど少しお話したように無意識は、
意識的に働かせることはできないのです。

 

意識できないから無意識なので。

 

では、どうやって無意識に仕事をさせるかというと、
無意識とは習慣だということをまずは知っておいてください。

 

ある作業を意識的に何度も繰り返した結果、
それを意識しなくてもできるようになることで、
無意識的な行動、習慣となって自動的に働いてくれるのです。

 

インキュベーションの生みの親であるポアンカレも、
数学者として日々、数学について考え続けていた。

 

だからこそ、数学的な思考が習慣となって、
無意識が自動的にアイディアを発想し、
画期的な発見の元になったのです。

 

習慣化するほどあることを考えるという行動が、
アイディアを生み出すための前提条件になる

 

このことは覚えておいてください。

 

インキュベーション実践の3ステップ

 

アイディアを生み出すに足る材料と思考。
2つが揃えばあとは実践するだけです。

 

前提条件さえ満たしていればインキュベーション自体は、
単純で簡単に実践できる行動しかありません。

 

以下の3ステップでインキュベーションを実践してみましょう。

 

  1. どのようなアイディアを生み出したいかを明確にする
  2. 生み出したいアイディアについて意識的にとことん考える
  3. 意識をずらしてアイディアに関してはリラックスする

 

どのようなアイディアを生み出したいかを明確にする

 

まず、自分がどのようなアイディアを生み出したいのか?
なぜそのようなアイディアが必要なのかなどなど。

 

アイディアを生み出したい目標や動機などを明確にしましょう。

 

良いアイディアを生み出したいのにうまくいかないという場合、
創造力云々以前に生み出したいアイディアについて、
ぼやけて曖昧なゴールしか考えていないことが多いです。

 

最終ゴールがきちんとできてないとそこにたどり着けないので、
アイディアのゴールを自分でまずは決めておきましょう。

 

生み出したいアイディアについて意識的にとことん考える

 

目標が定まったら意識的に、徹底的にアイディアについて考える。

 

関係ありそうな知識を仕入れたり、実際に経験してみたり、
紙などに自分の思考の流れを書いてみたりなどなど。

 

自分が知っているあらゆる方法をもちいて、
アイディアについて徹底的に考えてみてください。

 

人によって、また生み出したいアイディアの目標によっては、
この時点で何かしらのアイディアを思いつくかもしれません。

 

思いつかなければインキュベーションの核でもある、
次のステップに進みましょう。

 

意識をはずしアイディアに関してリラックスする

 

目標は明確になった、それについてとことん考え抜いた。

 

でも、何も良いアイディアを思いつけなかったのなら、
一旦アイディアから意識をはずしリラックスしましょう。

 

忘れても良いぐらいの姿勢で大丈夫です。

 

先ほどお話したように気分も影響するので、
好きなことや面白いことなどををするのも良いですね。

 

アイディアに必要な材料がきちんと揃っているなら、
あとは無意識が勝手に複数の要素を組み合わせて、
最適なアイディアを生み出してくれるでしょう。

 

自分の中にはあったけど意識してなかったような知識などが、
アイディアと関連づいて思いもよらないものを生み出すこともある。

 

全てはあなたがそのアイディアを考えつくためにしてきた努力と、
これまで積んできた知識や経験しだい。

 

 

以上がインキュベーションの実践3ステップです。

 

インキュベーションは自分の能力を100%活用する手段

 

アイディアがフッと降ってくるって言われると、
なんか特別な能力みたいな感じがする。

 

それこそ才能みたいなものなんじゃないかと、
そう思えるかもしれません。

 

ですが、インキュベーションはあなた自身の能力を、
100%あまさず利用するための手段なのです。

 

これまで積んできた知識や経験、思考過程。

 

そういったものがおのおのの中に大量にあって、
だけど一度に一つのことしか見えない意識では、
そのすべてを有効活用することはできません。

 

ですが、無意識にはそれができる力があり、
インキュベーションによってそれを引き出すのです。

 

逆に、知識や経験を積む気もなく考えることもしないのなら、
才能があろうとも無意識をうまく働かせることはできない。

 

インキュベーションとはこれまで積んできた努力を、
結実させるための方法の一つと言えるのです。

 

 

もし、あなたがあることについてこれまで様々な努力をしたのに、
思ったように良いアイディアを生み出せないと悩んでいるとしたら。

 

ぜひインキュベーションを試してみてください。

 

これまでそのためにやってきたすべてのこと、
またそれ以外のすべての要素が結実し、
きっと良い結果をもたらすと思いますよ。

 

 

では、今回はここまでです。

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